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剣道の危険防止と予防について

頭頸部 84例(6.7%)
身幹 39例(3.1%)
上肢 310例(24.6%)
下肢 738例(58.6%)
その他 89例(7.1%)
総計 1260例
(出展:スポーツ等活動中の傷害調査、財団法人スポーツ安全協会、1999より引用)

 これは、スポーツ等活動中の傷害調査における剣道の傷害の部位を表したデータです。
 一般的にスポーツにおける事故の発生率は平均1%台とされ、剣道における事故発生率は0.2%と他のスポーツ(特にコンタクトスポーツと呼ばれるバレーボール(25690例)柔道(2280例))より低い状況となっています。しかし、剣道においての事故は下肢(下半身)の事例が半数を超えています。

 そもそも、剣道を稽古していて、けがをしたり、病気になったりしては何にもなりません。
安全に稽古ができるためにはどのようなことを注意しなければならないのか。簡単にまとめました。
 部活動の上級生や指導なさる方々はお分かりになっていると思いますが、ご参考までに ご一読いただければ幸いです。

安全に稽古するために

1.まじめに真剣に稽古すること

  ふざけた態度、いいかげんな気分で稽古していると、稽古の効果が上がらないだけでなく、普段より疲れますし、思わぬ事故が発生します。
 次にも書いてありますが特に竹刀をふざけて使うのは厳禁です。稽古は緊張して、気合を入れて、精一杯やることが大切です。

2.剣道具は整理整頓して、本来の目的で使用すること

  凶器ともなる竹刀を使用している剣道は、それゆえに剣道具が壊れたときは、すぐに修理しなければなりません。最悪の場合、思わぬ怪我をしてしまいます。
 現象としては、竹刀のささくれ()や破損、面紐や小手ひも、胴ひも、垂ひもがほどけたり切れたり、胴の乳皮が切れるということが考えられます。剣道具の整備には、念には念を入れて注意して取り扱いましょう。
 またおもちゃのように剣道具を取り扱ってはいけません。剣道具はあなたを守る命綱としての「防具」です。「道具」ではありません。

 特に剣道で心がけていただきたいのは、竹刀を杖代わりに使ったり、むやみに振り回さないことです。ささくれ()などをおこしたり、破損したりするどころか、相手に怪我をさせてしまいます。竹刀はある意味「凶器」にもなります。
 竹刀は「竹刀」として使うものです。
 稽古を始める前、稽古の途中、稽古後はかならず竹刀を点検する習慣をつけることが大切です。また、こわれたらすぐに交換できる竹刀を用意しておく必要もあります。したがって、竹刀を2本用意しておくのが良いでしょう。
 また竹刀を人に貸したり、人から借りたりするのは良くありません。それは、竹刀は稽古や試合中に壊れやすいものですし、また、他人に適している竹刀はあなたにとって適した重量・長さとは限らないからです。

※ささくれ
 →竹刀の竹の繊維が飛び出すこと。飛び出した繊維が面や床などに飛ぶことによって、目の怪我や足の怪我などを起こす危険性があります。

3.道場も整理整頓すること

  道場の掃除等、整理整頓もかならず行なってください。掃除をするところから稽古に入っているのだという気持ちで、しっかりやりましょう。これは神聖な道場だからという訳ではありません。汚いと見た目も気分が悪いですし、整理整頓せず落ちているものなどで怪我をします。掃除をするだけではなく、まわりもきちんと整理整頓しましょう。
 ぶつかるようなものは片付けておき、思う存分稽古ができるようにしましょう。道場を大切にし、きれいにする心も剣道では大切です。

4.準備運動は必ず行うこと

 剣道に限らず急に激しい運動をすることは良くありません。稽古そのものがだんだんと激しい稽古になるように心がけることが大切です。寒稽古や、起きてからあまり時間が経たないで行う早朝稽古などは、特に気をつけましょう。年齢差関係なく心臓発作による突然死などの悪影響が十分に考えられます。

 突然死の死因のほとんどは心臓疾患です。それを心臓突然死といい、その大部分は「心室細動」という病気となっております。(事前に判明できない突然死のため、「心室細動」による死者は、年間約5万人と推測されています)
 「心室細動」になると心臓がけいれんし、ポンプとしての役割が果たせず、助かるチャンスは1分経過するごとに約10%づつ失われ、10分後にはほとんどの人が死に至ります。ですので、若いからといって無関係とは決して思わないで下さい。

5.体に無理をさせず、能力や体力にあった稽古をすること 

 無理な稽古は逆効果になるばかりでなく、けがや病気の原因になります。剣道は、道場の環境・防具の使用などで、熱中症が他のスポーツに比べ発生しやすく、事故が発生しやすい状態になっています。
 同じ場所で同じ時間にやる場合、技術の程度や体力の差、年齢差などによって稽古メニューを変えたり、グループわけをしたりする必要があります。前にも記載しましたが稽古の質・量は徐々に高めていくことが望ましく、すべての人が一斉に同じ稽古をするというのは好ましくありません。(合わせる場合はレベルの低い人にあわせる必要があります)

 また、若い人は、栄養が十分にとれていて、睡眠時間が不足しなければ相当きつい稽古でも耐えられるものです。しかし、若い人でもこの2点をおろそかにすると稽古が続かない(耐えられない)ばかりか、集中力や気合が抜け、事故やけがの原因につながります。夏合宿・寒稽古・遠征などするときなどは、水分補給と万全な体調管理を行うなどしましょう。

6.医薬品の完備と救急法についての勉強をすること

 このことは指導する人に関わる話なのですが、知っているといいことですので、記載します。

 剣道における外傷の例としては、まめ・たこ・打撲・鼓膜裂傷・突き指・脳しんとう・肉ばなれ・筋断裂・アキレス腱断裂・骨折などです。簡単なものは、仲間達で手当てができるように、一通りの医薬品を薬箱などにそろえておく必要があります。また、これらの外傷に対するRICE(rest=局部安静、icing=冷やす、compression=圧迫を加える、elevation=高く上げておく)などの応急処置・救急法を勉強しておくことも大切です。(※最近ではこのようなことを消防署等で救急講習として無料でおこなっています)
 また、最近では心臓発作による突然死(心室細動)に対応するため、除細動(心室細動の対策方法)ができる自動体外式除細動器(自動電気ショック発生器)の使用が普通の人でも認められるようになりました。

 しかし、手当てに迷うような時は、救急隊員や、医療機関などでの医師・看護師の診断が1番良いことです。その人たちの判断をできるだけ早く行い、大事にいたらないようにしましょう。

参考:スポーツ救急箱


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